Deep lover...
「…俺は翔と一緒にいる事が多いから
翔の味方だと思われてるかもしれないけど
ちゃんと美結ちゃんの事考えてるんだよ。
すれ違ってる二人、見ていたくないんだ」
「でもあたし…直先輩を裏切れないよ」
あたしの事を大切にしてくれてる直先輩を
裏切るなんてできない…。
「…じゃあ美結ちゃんは、翔の事は裏切れるんだね」
「ぇ…」
「ごめん、今のはちょっと酷かったね。
だけど彼氏だって、自分の気持ち押し込めてまで
付き合ってほしいだなんて思わないはずだよ。
これは俺の意見だけどね」
「……」
思わず俯いたあたしの視界には、ライブのチケット。
大きく書かれた会場と日程が目に入った。
6月24日。
「麻生君…あたしやっぱり行けないよ。
この日は先輩との記念日だもん」
「へぇ。じゃあ、選べってことじゃない?
「俺か彼氏か」ってさ。
これで美結ちゃんがライブに来なかったら
翔も諦めるだろうね。
まだ時間もあるし、ゆっくり考えなよ。
「本当に大好きな人」が誰なのか。
まぁ、もう解ってるんだと思うけどね」
にこっと笑って、麻生君が喫茶店を出て行った。