Deep lover...
直先輩とは、週末にはいつも出かけていた。
あたしは自然と笑えてる気がした。
嘘の笑いじゃない、本当の笑顔で。
―――…
その日もいつものように街へ出かけた。
腕を組んだり手をつないだり、そういった事には未だ踏み出せないでいる。
「美結、何にする?」
「んー、チョコレートパフェw」
「好きだねー、いつもそれじゃん」
「えへへー」
『いつも』なんてついてしまうくらい
馴染んでしまった喫茶店。
落ち着く雰囲気で、結構お気に入り。
「…翔のライブ見に行くからさ~」
「あぁ~彼ね。
いいなぁ~彼氏があんなカッコいい人で。
しかもヴォーカルでしょ?」
「あっ、そんな大きい声で言わないでよっ!
一応彼、今人気なんだから~」
バンド…
ヴォーカル…
翔…
あの子、翔の…彼女…?
あたし達の席の横の席に座っていた女の子。
綺麗で…細くて…
…新しい、翔の彼女。
それ以上は何も聞きたくなかった。
知りたくなかった。
「美結?どした?」
「ん…なんでもない」
その時初めて
あたしは直先輩の前で嘘の笑顔を見せた。