忘れたはずの恋
「吉永さん、近藤君ってどう思う?」

夕方、田中さんが珍しく休憩に誘ってくれたので食堂で少しだけお茶をした。

思わず飲み物を噴き出しそうになる。

「何ですか、さっきの続きですか?」

私は口元を拭いた。

「いや、吉永さんと近藤君って何となく合うんじゃないかと。
あ、吉永さん、彼氏いるの?」

「いないです」

そう言って、しまった!と思った。

まるで誘導尋問じゃない、これ。

「じゃあ、一度セッティングするから食事にでも、ね?」

田中さん、随分と必死だよね。

「…近藤さんに何か言われてます?」

田中さんは苦笑いしながら

「何も〜!」

…絶対に何かあるよね。

人から好意を持たれている、のは鈍感じゃない限りわかる。

でもね。

「私、年下は対象外なんです」

ハッキリ言おうと思って言った。

「え〜!若い方が良いじゃない」

田中さん、諦めてください。

「30歳も過ぎてしまったし…。
彼にはもっと若い子がお似合いです」

「でも、わからないでしょ?
年下もまた良いかも」

「私が年下と付き合うとかそういう事になった時、世の中の天と地がひっくり返る時ですよ。
本当にあり得ない」

断ろうとしているのに田中さんが中々引き下がってくれない。

「ね、私も付いて行くから。
一度食事しよう!
それか職場の飲み会があったら隣に座ってあげて!」

頭まで下げられてしまった。



…どうしてこうなるの。
< 13 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop