忘れたはずの恋

「激励会、ですか？」

7月中旬の金曜日。

突然言われた吉田総括の言葉に唖然とする。

「そう、明日に」

明日って…急すぎる。

「藤野君、来週はほとんど休むからね。
もう明日しかないんだ」

来週の木曜から８耐が始まる。

仕方がないといえば仕方がないんだけど。

「で、どれくらい人が集まっているんですか？」

その質問に総括はニヤリ、と笑って

「80人くらい。
ここの局全体だけどね。
集配で50人くらいになってるかな」

…凄い人数。

「勿論、行くわよね？」

田中さんがすかさず突っ込んでくる。

えー！
田中さんがそう言うって事は…。

「近藤君も来るから」

そう耳打ちされて、こっそりとため息をつく。

…年下。
勘弁してよ。
もう、恋愛なんてしないから。

自分が傷付くだけの関係なんていらない。
年下なんて、尚更裏切るでしょ？
狙うならもっと若い子を狙いなよ。

どうして私なのよ。

「明日、ひょっとして予定があった？」

総括が申し訳なさそうな顔をしている。

「いいえ、参加します」

自分がにこやかに笑っている事に落ち込む。

…気が乗らないなら断れば良いのに。
困った顔を見ると、どうしても断れない。

「良かったー！
レースも観に行く吉永さんが来なければ意味ないしね」

総括がニコニコ笑っている。

…いや、来なくても決勝には行くから大丈夫ですよね？



一体、何なの？

意味深。