忘れたはずの恋
「顔、ガチガチだぞ」
相馬課長が藤野君の額を指で突いた。
「…乗ればこの緊張もなくなると思うのですが」
ため息混じりの藤野君。
「初めての8耐だから楽しんでこいって、祥太郎さんにも言われたんですけど…」
チラッと祥太郎さんに視線を向けていた。
「中々そういう訳にはいかないです。
このチーム自体、有名なチームだしその名を背負って走るのはプレッシャーです」
どうして良いのかわからない、という表情。
「…でも。
皆さんが応援に来て下さっているので励みになります」
一瞬、顔を下に向けてから上げたその表情は。
何かを吹っ切ったような、そんな感じ。
「…観に来たこと、後悔はさせません」
今まで見たことのない、藤野君の目。
目の奥がしっかりと据わっている。
「楽しみにしています。
君がこうやって再びレースに出られて、ホッとしています」
吉田総括…?
再びって…?
「…自分の力を信じて走りきります」
藤野君はギュッ、と拳を握りしめる。
吉田総括は何度も頷いた。
「せっかくだから、幸平と写真撮りません?」
微妙な空気感を打ち破ったのは祥太郎さんだった。
「普段はすぐに脱いでしまうので中々幸平とこのスーツ姿で撮れない事が多いんです。
是非、どうです?」
祥太郎さんは真っ直ぐ私を見つめていた。
…そんな事を言われても。
チラッと藤野君の様子を伺うと、またボンヤリと天井を見つめている。
…空気読めない人になるのも嫌だし。
「撮ろう、藤野さえ良ければ」
相馬課長は何故か私の肩を叩く。
「…幸平」
ボンヤリとしている藤野君の肩を今度は祥太郎さんが叩く。
「あ、はい?」
「皆さんと写真」
パドック通路の方に行くように祥太郎さんが合図をする。
「はい」
藤野君は立ち上がるとヘルメットを持ち、私達が付いてくるのを確認してパドック通路の方に歩いていった。
私達もその後を追う。
「この辺りで良いですか?」
写真写りが良さそうなくらい、太陽の光があたる場所に出る。
…暑い。
なのに藤野君は暑い顔をせずに私達と一緒に並んでくれた。
「じゃあ、撮ります〜!」
チームの方が写真を撮ってくれる。
「二人で撮ったら?」
相馬課長が私と藤野君を押す。
「「えっ?」」
二人同時に声を上げる。
「いいから、撮っておけよ」
二人で再び写真を撮る事になった。
…こんなに何回も撮って、嫌じゃないのかな。
チラッと藤野君を見ると目が合ってしまって慌てて逸らした。
…恥ずかしい!
相馬課長が藤野君の額を指で突いた。
「…乗ればこの緊張もなくなると思うのですが」
ため息混じりの藤野君。
「初めての8耐だから楽しんでこいって、祥太郎さんにも言われたんですけど…」
チラッと祥太郎さんに視線を向けていた。
「中々そういう訳にはいかないです。
このチーム自体、有名なチームだしその名を背負って走るのはプレッシャーです」
どうして良いのかわからない、という表情。
「…でも。
皆さんが応援に来て下さっているので励みになります」
一瞬、顔を下に向けてから上げたその表情は。
何かを吹っ切ったような、そんな感じ。
「…観に来たこと、後悔はさせません」
今まで見たことのない、藤野君の目。
目の奥がしっかりと据わっている。
「楽しみにしています。
君がこうやって再びレースに出られて、ホッとしています」
吉田総括…?
再びって…?
「…自分の力を信じて走りきります」
藤野君はギュッ、と拳を握りしめる。
吉田総括は何度も頷いた。
「せっかくだから、幸平と写真撮りません?」
微妙な空気感を打ち破ったのは祥太郎さんだった。
「普段はすぐに脱いでしまうので中々幸平とこのスーツ姿で撮れない事が多いんです。
是非、どうです?」
祥太郎さんは真っ直ぐ私を見つめていた。
…そんな事を言われても。
チラッと藤野君の様子を伺うと、またボンヤリと天井を見つめている。
…空気読めない人になるのも嫌だし。
「撮ろう、藤野さえ良ければ」
相馬課長は何故か私の肩を叩く。
「…幸平」
ボンヤリとしている藤野君の肩を今度は祥太郎さんが叩く。
「あ、はい?」
「皆さんと写真」
パドック通路の方に行くように祥太郎さんが合図をする。
「はい」
藤野君は立ち上がるとヘルメットを持ち、私達が付いてくるのを確認してパドック通路の方に歩いていった。
私達もその後を追う。
「この辺りで良いですか?」
写真写りが良さそうなくらい、太陽の光があたる場所に出る。
…暑い。
なのに藤野君は暑い顔をせずに私達と一緒に並んでくれた。
「じゃあ、撮ります〜!」
チームの方が写真を撮ってくれる。
「二人で撮ったら?」
相馬課長が私と藤野君を押す。
「「えっ?」」
二人同時に声を上げる。
「いいから、撮っておけよ」
二人で再び写真を撮る事になった。
…こんなに何回も撮って、嫌じゃないのかな。
チラッと藤野君を見ると目が合ってしまって慌てて逸らした。
…恥ずかしい!