忘れたはずの恋
4.だから私は逃げる/だけど僕は追いかける
「お姉ちゃん、彼氏なの?」

家に入ると質問攻め。

「昨日は彼とお泊まり?」

母も嬉しそうに…。

私は大きくため息をつく。

「彼氏でも何でもない、会社の人」

「若い彼氏でも作ったのかと思っちゃった、で、何歳?」

妹の桃花は私が完全に藤野君をターゲットにしていると思っている。

「19歳」

母と早紀が固まった。

…これでちょっとは大人しくなるでしょ。

「「未成年ー!?」」

「うるさいなあ、静かにしてくれる?」

私は自分の部屋に行こうとした。

「お姉ちゃん、やるねえ~」

「お母さんは全然いいわよ~。早く結婚してくれたら」

…全然ダメだわ。
2人は私を差し置いて盛り上がっている。

本当に勘弁して。

内心、倒れそうになりながら自分の部屋に入ってベッドに寝転んだ。

私が藤野君の事を本気になってはいけないのよ。
同じ職場の人でも彼は住む世界も全然違う人だし。
私なんかが好きになってはいけない。

間違って好きになって付き合うことになったりして…。

でも。

それが彼の未来への足枷になってしまったら。
私という存在は疎ましいものになる。
彼の人生にも、彼を昔から知っているファンの人たちにも。

あの夏のサーキットで、ほんの少しだけ触れたあの世界には彼だけの世界があった。
私の知らないあの世界で沢山の人たちに彼は愛されている。



なのに…藤野君。
なんて事を言うの?
私と付き合うって事?

そんな事、回答出来るわけない。

私をそんなに苦しめたいの?
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