忘れたはずの恋
「本当に作戦会議中なので」
吉田総括が珍しく二人を拒絶した。
目を丸くしてやり取りを見つめる。
「じゃあ会議が終わったら言ってください。
向こうにいますので」
相馬課長は何となく察したのか、店員さんに何やら話をすると少し離れた席に案内されていた。
「で?」
吉田総括は二人が席に着いたのを見届けてから私を見る。
言い訳も何も。
逃げるのは許さない、といった目をしている。
「…吉永さんの心の中には誰がいますか?」
吉田総括と視線を合わせられない。
少し、下を向いてから顔を上げた。
「…近藤さんではありません」
あの強引さが辛い。
「そうでしょうね」
吉田総括が右手を握りしめ、コツン、とテーブルを鳴らした。
「…きっと、藤野君なんですけど」
そう言って私は相馬課長と藤野君の座るテーブルを見つめる。
「でも、ダメなんです」
「…藤野が同じ想いを抱いていても?」
「だったら余計です」
意を決して総括を見つめた。
顔色一つ、変えずに冷静な総括は私をじっと見つめていた。
「彼はまだ19歳です。
職場でもまだまだこれから。
レースでも。
私なんかと一緒になったって何一つ、良い事もない。
私だってもう31で早く結婚しないと、って焦るし。
それがもし藤野君を追い込む事になったら私は耐えられません」
吉田総括は俯いて肩を震わせている。
…えっ、私、笑われている?
「…全く、私の妻と同じ台詞を言うなんて」
吉田総括は声を上げて笑った。
…こちらは真剣に言ったのに笑われてムカつく、と最初は思ったけど。
年上の奥さんが…私と一緒の事を言ってた?
「…もっと怯えているのは寧ろ、年下の男の方だと思いますよ」
吉田総括も楽しそうに相馬課長と話をしている藤野君に目を向けた。
吉田総括が珍しく二人を拒絶した。
目を丸くしてやり取りを見つめる。
「じゃあ会議が終わったら言ってください。
向こうにいますので」
相馬課長は何となく察したのか、店員さんに何やら話をすると少し離れた席に案内されていた。
「で?」
吉田総括は二人が席に着いたのを見届けてから私を見る。
言い訳も何も。
逃げるのは許さない、といった目をしている。
「…吉永さんの心の中には誰がいますか?」
吉田総括と視線を合わせられない。
少し、下を向いてから顔を上げた。
「…近藤さんではありません」
あの強引さが辛い。
「そうでしょうね」
吉田総括が右手を握りしめ、コツン、とテーブルを鳴らした。
「…きっと、藤野君なんですけど」
そう言って私は相馬課長と藤野君の座るテーブルを見つめる。
「でも、ダメなんです」
「…藤野が同じ想いを抱いていても?」
「だったら余計です」
意を決して総括を見つめた。
顔色一つ、変えずに冷静な総括は私をじっと見つめていた。
「彼はまだ19歳です。
職場でもまだまだこれから。
レースでも。
私なんかと一緒になったって何一つ、良い事もない。
私だってもう31で早く結婚しないと、って焦るし。
それがもし藤野君を追い込む事になったら私は耐えられません」
吉田総括は俯いて肩を震わせている。
…えっ、私、笑われている?
「…全く、私の妻と同じ台詞を言うなんて」
吉田総括は声を上げて笑った。
…こちらは真剣に言ったのに笑われてムカつく、と最初は思ったけど。
年上の奥さんが…私と一緒の事を言ってた?
「…もっと怯えているのは寧ろ、年下の男の方だと思いますよ」
吉田総括も楽しそうに相馬課長と話をしている藤野君に目を向けた。