忘れたはずの恋
藤野が丁寧に説明をして何とかマシンに跨った吉永さん。
一瞬、口元が緩んだ。
良いでしょ?そこからの景色。
僕も大好きでした…いや、今でも大好きです。
「藤野、後ろに乗って二人乗りしてよ」
突然の相馬課長の発言。
僕は目を丸くした。
それは~…露骨すぎですよ、相馬課長。
藤野を見ると明らかに困った顔。
吉永さんなんて帽子を被っているからあまり見えないけれど、きっと顔、真っ赤です。
…そんな様子を見ていると吉永さん、もっと気持ちに素直になって楽に生きたら良いのに。
「…吉永さんが嫌がりますよ」
藤野は吉永さんに嫌な思いをさせたくない、という気持ちで必死なんだろうけど。
この二人、結局は両想い。
どうしても歳の差が二人の距離を広げてしまう。
ならば!!
「吉永さん、全日本ライダーと一緒にバイクに乗る機会なんて彼女じゃない限り、ないですよ」
相馬課長以上の発言をして、無理にでも二人をくっつけてしまいましょう。
藤野と吉永さんの鋭い視線が突き刺さった。
痛い…けど、我慢。
『思いっきり、吉永さんの顔が歪むくらい、手を握ってみてはどうですか?』
先日、藤野と二人で話をしていた時の事をふと思い出す。
僕から見ればお互い意識しているのに中々前に進めない二人を見て言った言葉。
『そんな事をしたら…吉永さんと一生、口を聞けません』
頬を膨らませながら言う藤野に思わず、僕はそのパンパンに膨らんだ頬を人差し指で突いた。
『私はまだ付き合ってもいない今の妻にそうしましたよ。
私の気持ちは完全に固まっているんだけれど、妻の気持ちがよくわからない。
だから、何気ない動作の延長で彼女の左手を思いっきり握り締めました』
藤野はぽかんと口を開けていたっけ。
『最初、私の掌から逃げようとしたんです。
でもね、私はもう一度握り締めたんです。
本当に嫌なら、意地でもその瞬間に振り払うと思ったから』
まだ付き合ってもいなかった早希子さんの手を握り締めるのは本当に勇気のいる事だった。
もう一度、逃げようとしたけれど早希子さんは真剣な僕の目を見て、その視線を逸らさなかった。
吸い込まれそうなその目。
僕が負けそうになって一瞬、手の力を緩めたのに。
早希子さんは黙って僕を見つめたまま、僕に手を握られていた。
いつでも、逃げる事が出来たのに。
そのまま、他愛のない会話を交わしてようやく手を離した時。
僕は嫌われてない、と実感したし、もっとこの人と一緒にいたい、と思ったんです。
だから、藤野も吉永さんも。
少しでもその肌に触れるようなことがあれば。
何か進めるかなって。
一瞬、口元が緩んだ。
良いでしょ?そこからの景色。
僕も大好きでした…いや、今でも大好きです。
「藤野、後ろに乗って二人乗りしてよ」
突然の相馬課長の発言。
僕は目を丸くした。
それは~…露骨すぎですよ、相馬課長。
藤野を見ると明らかに困った顔。
吉永さんなんて帽子を被っているからあまり見えないけれど、きっと顔、真っ赤です。
…そんな様子を見ていると吉永さん、もっと気持ちに素直になって楽に生きたら良いのに。
「…吉永さんが嫌がりますよ」
藤野は吉永さんに嫌な思いをさせたくない、という気持ちで必死なんだろうけど。
この二人、結局は両想い。
どうしても歳の差が二人の距離を広げてしまう。
ならば!!
「吉永さん、全日本ライダーと一緒にバイクに乗る機会なんて彼女じゃない限り、ないですよ」
相馬課長以上の発言をして、無理にでも二人をくっつけてしまいましょう。
藤野と吉永さんの鋭い視線が突き刺さった。
痛い…けど、我慢。
『思いっきり、吉永さんの顔が歪むくらい、手を握ってみてはどうですか?』
先日、藤野と二人で話をしていた時の事をふと思い出す。
僕から見ればお互い意識しているのに中々前に進めない二人を見て言った言葉。
『そんな事をしたら…吉永さんと一生、口を聞けません』
頬を膨らませながら言う藤野に思わず、僕はそのパンパンに膨らんだ頬を人差し指で突いた。
『私はまだ付き合ってもいない今の妻にそうしましたよ。
私の気持ちは完全に固まっているんだけれど、妻の気持ちがよくわからない。
だから、何気ない動作の延長で彼女の左手を思いっきり握り締めました』
藤野はぽかんと口を開けていたっけ。
『最初、私の掌から逃げようとしたんです。
でもね、私はもう一度握り締めたんです。
本当に嫌なら、意地でもその瞬間に振り払うと思ったから』
まだ付き合ってもいなかった早希子さんの手を握り締めるのは本当に勇気のいる事だった。
もう一度、逃げようとしたけれど早希子さんは真剣な僕の目を見て、その視線を逸らさなかった。
吸い込まれそうなその目。
僕が負けそうになって一瞬、手の力を緩めたのに。
早希子さんは黙って僕を見つめたまま、僕に手を握られていた。
いつでも、逃げる事が出来たのに。
そのまま、他愛のない会話を交わしてようやく手を離した時。
僕は嫌われてない、と実感したし、もっとこの人と一緒にいたい、と思ったんです。
だから、藤野も吉永さんも。
少しでもその肌に触れるようなことがあれば。
何か進めるかなって。