柊くんは私のことが好きらしい
Ⅳ・
――ああ。消えたい……。
視線を感じるのもあるけど、朝から家族総出で見送られたダメージが思いのほか大きい。
ふたりの姉には時間いっぱい全身をもてあそばれ、お母さんはわざわざ私の好物ばかりの朝食を作るし、お父さんには学校まで送迎された。
無駄にプレッシャーかかっただけなんですけど……!
ああもう消えたい帰りたい教室行きたくない。
いつもより遅く着いたと思ったら、いちばん登校する人が多い時間帯だった。ありえない。めっちゃ視線感じる。
下駄箱でまごついても余計に怪しまれるだけだろうから、行くけど。視線がとにかく痛い。ひそひそ噂されている気もする。
「ねえ……あれって、」
そうだよ高遠陽鞠ですよ!! どこをどう見たって疑いようないじゃんか!
走り出したい気持ちを堪えて、誰の声も視線も拾わないよう足早に教室へ向かう。
本当に、疑問でしかない。元がメイク映えするような顔じゃないんだから、鏡を見たってどちら様!?なんて変貌は遂げなかったのに。
目新しさを感じてしまったのは、どうしてなんだろう。
『メイクは顔だけにあらず!』と、カーディガンを貸してくれたと思ったら、スカートやハイソックスの長さまで微調整してきたふうちゃんは、出来上がりを見て満足そうだった。
頭に伸ばした指が、するりと毛先まで通るだけで落ち着かない。