柊くんは私のことが好きらしい
「――……、」
階段に腰かけた私は、沈黙を保っていた柊くんが振り返り息を呑む気配を感じていた。
「なんで……」
ぽつりと落とされた否定的な疑念に、答えることはしなかった。
柊くんがどうしたいかわからなくたって、私はここにいたい。何を言われても、どんな結果になっても、私には話したいことがある。
もう逃げないって、決めたから。
「ひまりは俺のこと、苦手だろ」
久しぶりに近距離で目を合わせた柊くんの顔は、悲壮さで満たされていた。
驚きはあったけれど答えることなく彼を見上げ、耳を傾ける。それが余計に悲しませたのかもしれないと、話を聞いて思った。
「話しかければ笑ってくれるし、誘えば乗ってくれるけど……嫌われてないって感じるだけで、それ以上のことは、なんにもなくて……最初はそれでいいって思ってた。困らせるって気付いてたけど、俺のこと、少しでも好いてくれてれば、それでいいって」
でも、今は、違う。
柊くんは悲しそうに、それでも自分を奮い立たせるみたいに、声音を強めた。
「割り込んでほしいんだ。俺が誰といても、隣に来てほしいって。話しかけてほしいって……意地になるくらい」
金曜日、今日と。逸らされたのが嘘みたいに真っすぐ見つめられて、なんとも言えない気持ちが込み上げる。
避けていたのは気まずかったとか、怒っていたわけじゃなくて……私を、待ってた? だから朝は、私を見て……。