柊くんは私のことが好きらしい
「ひまりは俺のこと、住む世界が違うって思ってるのかもしれないけど、俺にとってのひまりだって、そうだよ」
騒いだり目立った行動はしないけど、私をいつも楽しそうだと言う。
授業中は真面目に先生の話を聞いていて、当てられると正解するほうが多くて、間違えると少し恥ずかしそうで。咲といるときは聞き役に見えて、実はそうでもなく、じゃれてるように見えると。
「俺と違うって思うところは、あるけど。同じ空間にいて、授業受けて、友達だっていて、楽しそうなのは一緒なのに。……なんで、離れた場所にいるんだろうって。ずっと不思議だった」
……不思議なことなんて何もないはずなのに、どうしてだろうね。私も同じこと、思ってた。
そう多くはないとしても、違う部分ひとつひとつの差が大きすぎて。住む世界が違うって、こんなに近くにいても遠い存在だって、何回も、何十回も思ってた。
だけど今日、知ったんだよ。
試合が終わったあと、私が勝手に線引きして関わろうとしなかっただけなんだって。
……柊くんはそんなこと、なかったよね。
関わらなければ知ることもなく、自分の空想だけで世界は保たれていたはずなのに。変化も不変もお構いなしに、関われば育つ想いだけをひたむきに追いかけていた。