柊くんは私のことが好きらしい
「ねえ。俺はさ、教室でも、体育の時間でも、校舎のどこにいたって、ひまりのこと探してるんだよ」
そうしていつも、声をかけてくれたよね。
何かあるたび近づいて、笑いかけてくれた。きっかけがなくたって、そこに私がいれば。
「困らせるって解ってたけど。話しかけて近づくたんびに、ひまりは睨まれるんだって、苦労するのはひまりのほうじゃないのかって、何度も言われたけど……我慢、とか、できない」
「……」
「無理なんて、言うなよ」
涙が浮かんだ。
悲しそうで、悔しそうな柊くんの表情に、少しも頑張ってないくせにって、自分でも思ったから。
「自信が……っなくて、」
すぐ俯いてしまう、自分。
地味だとか暗いとか、そんな風に自分のことを見てはいないけど。柊くんや横居さんやお姉ちゃんたちと比べたら、どうしたって引け目を感じてしまう。
だから目立ちたくなくて、だけど柊くん相手じゃ目立たないほうが難しくて。
自分では比べるくせに、人に比べられるのは怖いなんて、おかしな話だけど。
「かわいく、ないから……バカにされるの、怖くて……」
関係ない、って。知ったことか、って。本当は大声で言ってしまいたいのに、臆病風に吹かれて何も言えなくなる。