柊くんは私のことが好きらしい
「ノート貸してくれて、ありがと」
「――……」
「やっぱ、ひまりの字、きれいだね。取り方もうまいし、わかりやすいし、また写させてほしー……とか俺、借り過ぎだよな」
……なん、で。
僅かに上げた視線の先で、柊くんのつま先がこちらへ近づいていた。
「次の試験、やばいかも。英語と数学がやばい。ひまり、得意じゃん。教えてほしい……って、めんどいよな。ごめん」
嘘だ……こんなの。
私は何も答えてないのに、心臓がまとう緊張はあのときと全く一緒だなんて。
「あー……なんていうか。勉強の話はどうでもよくて……いや、どうでもよくはないんだけど。それより大事な話があるとか、ないとか……何言ってんだ俺」
どきどきした。どうしたんだろうって不安を感じた以上に、途切れ途切れに言葉を並べていた柊くんの緊張が伝わって、どきどきした。
あのときと違うのは、続きを知っているということ。座っている私の目線と合わせるように、柊くんがしゃがみこんだこと。
それから――……
「好き、なんだけど」
2度目の告白は、少しも赤くなっていなかったこと。私の目に、涙が滲んでいたこと。
空は青々としていて、眩しいくらいの日差しは真剣な柊くんの輪郭を縁取っている。
何も言えず、見つめ合ったままの時間は短かった。
「俺の彼女になってくれませんか」