柊くんは私のことが好きらしい

「あのときは言えなかったけど。俺、ひまりの好きなところ、いっぱいあるよ」


流れたひと筋の涙を拭われて、胸がぎゅっと締め付けられる。


「きっかけはしょーもないけどさ……話すようになった最初の頃は、緊張されてるなって。それでも一生懸命、話してくれるんだなって。嬉しかったし、かわいいなって思った」


こんなの、夢みたい。

柊くんが私を見つめてる。私に、触れてくれる。


「……今も、緊張、する」

「うん。かわいい」

「かっ……わいくない、よ……」


こうやってすぐ赤くなるの、やめたい。不慣れだって自分から教えているみたいで、心持ち俯いた。すると柊くんの手が離れ、「でも」と言うから、視線を向ける。


「咲といるときのひまりも、もっと見せてくれたらいいのにって思うよ。……福嗣とは普通に話すじゃん。幼馴染みたいなもんだって聞いて納得してるけど、ふたりを前にすると仲いいなって。羨ましいなって、」

「……」

「ねえ。気付いてる? 俺が福嗣に嫉妬してること」


射貫くような凛々しい瞳に、一瞬だけ息が止まった。


……え? と思った時には疑問と回答が洪水のように頭の中に押し寄せる。


嫉妬……って、柊くんが? ふっくんに?


『バッカお前……最近のキレッぷりは泣きたくなるほどコエーんだぞ』
『クソ……メグ……貴様ぁ……』


ふっくん対して当たりが強いなと思うことは何度かあった、けど。もしそれが私の知らない場所でも起こっていて、もっと前から嫉妬していたとしたら……。
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