柊くんは私のことが好きらしい
「あの福嗣が自分の手柄、人に言わずにいられるわけないじゃん。デートしてんじゃねえとか怒るくせに」
確かにふっくんは自分をキューピッドだと言い触らして、何かを期待してる節はあるけど……クレープ食べに行ったことだけ黙ってればよかったんじゃ……。その前に私が小鷹くんへ気付かせちゃったんだった。
「えと、ごめん……そこまで頭が回らなくて」
「いいよ。俺が勝手に嫉妬してただけなんだから」
「や、でも……次は、気を付けるね」
経験がなさすぎて、つい熱弁された案を採用してしまった上に、ふっくんに教えてもらったなんて軽く話しちゃうとか……柊くんは嫌だったんだな。気を付けよう……。
「――次?」
うん? 自分のダメっぷりから目の前の柊くんへ意識を向ける、と。なぜか驚きから嬉しさに変わる瞬間を目の当たりにした。
……笑ってる。にんまり口の両端を上げてらっしゃる。なんで? 次?が、何? ……次?
「――あっ! いや、ちが、今のは、」
「違うの?」
「ち、違くはないけど……!」
「次は、ひまり発案のデートができるってことでしょ?」
「……っ、」
「どこかな。楽しみだな」
しゃがんでいる柊くんは膝に頬杖をつきながら、目を細めて笑う。
思いがけないところで意地悪だよね、柊くんって。
そんな風に言われたら否定できなくなる。自然に次と出てきたんだから、そういうことなんだけどさ。