柊くんは私のことが好きらしい

「怖かったら、俺が守ってあげる」


コート近くまで引っ張られて、そんなことを言う柊くんと向き合う。そのうしろにはみっちゃんや小鷹くん、ふっくんが私を待ってくれていた。


「ひまりーん! 勝つよ! なんなら勝ったも同然だしね!」

「最悪ひまりが最後まで逃げきってくれれば、俺ら存分に戦えるっていうな!」

「お前は外野スタートでは」

「外野も大事なポジションですうー!」


どう考えても最強チーム……に、私なんかが入るとか。どういうことなの。戦略としてはかなりミスでしょ。私、逃げるしか能がないよ? むしろ真っ先に狙われるかもよ?


「……」

足元の白線を越えるまで、あと半歩。向こう側まで数十センチのこの境界線を、私は自分の意志で、踏み越えた。



「最っ悪! また負けたぁー!」


わーいと勝った喜びをみっちゃんとハイタッチで分け合っていると、味方も敵もコートの真ん中に自然と集まっていく。


意外や意外。今回も、楽しかった。

何より試合のせいじゃなく、柊くんにときめきすぎて、ちょっと疲れてしまったのが自分でも可笑しい。


男子の攻撃から守ってくれようとした柊くんは何度目かにボールをキャッチし損ね、外野に行くことになった不甲斐なさからか謝ってくれたんだけれど。そのとき、みっちゃんにも小鷹くんにも「あの速さならひまりは避けられる」って言われて、「ひまりマジかよ!」ってがっかりしたようで、どこか楽しそうな柊くんが1番かわいかった。


うう……思い出すだけで胸が。
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