柊くんは私のことが好きらしい


肌寒くなったり暑さが戻ってきたり。体調管理を心掛けるようにと、そこかしこで耳にするようになった頃。
クラスにはちょっとした衝撃が走った。

「アスレチック!?」


黒板にそう書いた咲と、教壇に立つ小鷹くんは騒ぎ始めたクラスメイトへ申し訳なさそうにするでもなく、飄々と事の経緯を説明してくれる。


なぜ、先日の学園祭実行委員会で決まるはずだったクラスの出し物が、全く別のものに変わっているのか。


「希望の“イケメンカフェ”は上級生とかぶっていることと、全学年合わせて飲食系が多すぎるとのことで却下された」

「学園祭で飲食系は鉄板だろー!」

「1年だからダメって納得いかなくない?」


各々が不平不満を漏らす中、私はちらりと柊くんの様子を窺う。驚いた顔をしていたけれど、近くの男子に話し掛けられると苦笑していた。


これは……メインに据えられることはなくなった、と思っていいのかな。


すると、視界にぴしっと手が挙がると同時に、「ちょっと待った!」とふっくんが声を荒げた。


「第二希望のゾンビ屋敷は!? 俺そっちやりたかったんだけど!」


浮かれたカップルをビビらせたいがためにね。


「残念だがバイオレンス過ぎると、資料提出した時点で却下されたな」


おめーのせいだよって咲の目が言ってるなあ……。


ゾンビメイク楽しみにしてたのに、かわいそうに。
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