柊くんは私のことが好きらしい
「第一希望もしくは第二希望共に通らなかったのは1年生が多かった。そこで生徒会、教師陣、実行委員長の意向を聞かされたわけだが」
どこか他人事のように聞いていた私は、小鷹くんが手元の資料を見て眉を寄せたことに首を傾げる。
「まあ大した案じゃなかったので割愛する」
「いやそこ割愛しないで話せっての! アンタが聞くだけ無駄だって、その場でぱぱっと勝手に話まとめたんでしょーが!」
咲の的確な突っ込みと、恐らく事実であろう事の経緯に、クラスメイトも口々に追及を始めた。
まあ、小鷹くんらしいと言えばらしいけど、何でアスレチックをするってことになったのかは気になるよね。
説明を面倒がった小鷹くんは諦めたようにため息をこぼし、教壇の机に両手をついた。
「要は的屋だ。祭りらしく興行や物売りを学園側はご所望だったわけだが。演劇やフリマをしたかったか? 俺は絶対に嫌だ。台本だ衣装だ練習だの時間が足りなさすぎるし、クラス全員でいらないものを売って楽しいのか疑問な上、金の管理ができるとは到底思えない。そこで体験型の何か、を提案されたわけだが輪投げや射的など縁日のようなものを教室でやってみてはと言われても、まだ夏休み気分か、としか返せなかった」
「……」
すらすらと滞りなく応えた小鷹くんへ、クラスメイトは追及の手を緩めた。というより反論の余地がないのか、みんな黙ってしまう。