柊くんは私のことが好きらしい
「いやいやいや……! いいじゃん縁日でも! 確かに夏祭り行くたび散々やったけども!」
「散々やったものを、大して間も明けず学園祭でもう一度する意味がわからない」
そうだそうだ、と一部ふっくんへ加勢しようとした空気は、言われてみればそうだけど、と熱を失っていく。
……これは先生たちも手を焼いたな。
それをクラスでどうにかしようなんて、難しそうだ。
ふっくんは戦意喪失してるし、柊くんはこっそり吹き出して反対する気はなさそうだし。
私は、私でも楽しめそうならなんでもいいなあ。
「他に意見があれば聞くが、正直話し合っても埒が明かず、使用できる場所も少なくなっていたから、とりあえず向こうの意見を組んで、体験型の何か……アスレチックを希望した。運動好きが多いクラスだから」
「咲は嫌いだし」
唯一小鷹くんの背後から言いたい放題な咲が、それはもう不機嫌そうに言う。すると彼は振り向いて、
「ひとりで走ったりは嫌だろうが、チームで競争するのは好きだろ?」
と、不思議そうに返した。それはつまり自信を持って言っているということで、不満だけが漂っていた教室の空気が澄んでいくのを感じたのは、悔しそうに顔を背けた咲だけじゃないみたい。