柊くんは私のことが好きらしい
「ハイハイ! じゃあ来場者対うちらで何かするってこと?」
体育会系女子と言ってもいいみっちゃんが、いちはやく興味を持ち始めると、小鷹くんは背後の黒板を指す。
「それを今から話し合って決める。場所はプールだ」
「プール!?」
ざわっとクラスメイトの声が混ざり合う。私もさすがに驚いた。
まだ蒸し暑い日はあるけど、これから秋ってときにプールって……できることも限られてくるんじゃ……。
「体育館のすぐ横。休憩所の食堂も近い。どうせやるなら人が集まりやすい場所のほうがいいだろ。まあ集まるかどうかは、何をするかで決まってくるが」
小鷹くんなりに考えた結果なんだろうけど、頭を悩ますことが必須になり、みんなが沈黙したとき。
「いいじゃん!」
柊くんだけが、楽し気に声をあげた。
「天候の問題とかあるだろうけどさ、それはちゃんと対策考えて、決めよーよ。プールとかめずらしいし、小鷹の言う通り集客にはうってつけな気ぃするし、どうせなら教室から出て、デカいことしたいじゃんっ」
柊くんの笑顔を見て、やっぱり魔法だなあ、と思う。
笑顔は伝染して、わくわくは広がって、学園祭の晴れた空を想像してしまう。
何をするかは決まっていなくても、柊くんにそんな風に言われて投げ出す人は、少なくともこのクラスにはいなかった。