柊くんは私のことが好きらしい
Ⅵ・
*
カーテンを開けてすぐ、気分を高揚させた秋晴れの空は、登校しても色を変えることなく頭上に拡がっていた。
「咲、かわいいねえ」
「テンション上げようとしたらこうなった」
黒い生地のパーカーには蛍光色のピンクとグリーンの星柄が所狭しと散りばめられていて、相当目立つデザインだけれど、学園祭だからか、そこまで派手だとは感じなかった。
咲の特徴でもあるツインテールもボリュームたっぷりに巻かれていて、つい触りたくなる。
「メイクもかわいいね。フェスっぽい」
「フェイスジュエリーね。やってあげようか?」
「え! ……やっぱやめとく」
「小さいやつなら目立たないって」
えぇーと言いながら咲の手を止めないのは、私も少なからず浮かれている自覚があるからだ。
一般の入場開始まで1時間を切り、日程の確認と着替えを済ませた私たちのクラスは、教室でそれぞれが最後の打ち合わせをしている。
私と咲は裏方で、することと言えば呼び込みや受付とか、さくらくらいのもので、服装もクラスTシャツで事足りていた。
「わ、何それスゲーッ」
できたよ、と咲が言ったのとほぼ同時に、バスケ部専用Tシャツを着る柊くんがそばにやって来る。
「ちょっと、触んな! 付けたばっかなんだから!」
そばかすみたいに私の目の周りに貼られたフェイスジュエリーをつついてくる柊くんを咲は怒るけど、私はこの手に顔をうずめたくなる。気持ち悪いな私!