柊くんは私のことが好きらしい

「俺にもやって! 付けたい!」

「嫌だけど。咲が男子で付けてあげたいのは先輩だけ」


断られても「先輩?」と笑みを浮かべる柊くんのテンションが高いのが見て取れる。ここ数日もそうだったけど、本当にイベント好きなんだなあ。


引っ張られるように、クラス内の熱気も上がり続けたし。弾ける笑顔にわざとなのか、咲は目を細めてるし。心なしか横居さんの呪いの言葉が聞こえてくるような。


これはちょっと、うかうかしていられない、かも?


「私、付けよう、か……?」


咲の指示を鏡代わりに、楕円形のフェイスジュエリーを目元へ添えていた柊くんに告げる。


きょとんとした顔がくしゃりと笑顔に変わって。近くの椅子を引き寄せ、私と向かい合うように座った柊くんは、今にも鼻歌を歌い出しそうに見えた。


「お願いしまっす」

「……ハイ」


こつんと小さなハートを投げられたような気分。それくらい柊くんは嬉しそうで、楽しそうで。ちっとも私から目を離さない。


「ド派手にしてね」

「……目立つように?」

「うん。ひまりが見て、こいつアホだなって笑えるくらい」


そんなとろけそうな笑顔を見せてくれる人に、アホなんて言えるわけないんだけど。そうだね。誰かに笑われてみるのも、ありかもしれない。


緊張で指が震えないように、時折自分のフェイスジュエリーの位置を鏡で確認して、それでも震えてしまう指でなんとか付け終えた。
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