柊くんは私のことが好きらしい
困ったような笑みで告げられて、その表情の意味も、言葉の意味も、すぐには深読みできない私はただ、赤くなるだけだった。
「メグー! そろそろ集合時間!」
「おー。今行く!」
う、うわあ……もう、直視できる自信が……っ!
するりと爪の甲で目元を撫でられたかと思えば、ごく至近距離で柊くんの息遣いを感じた。
「今度は逃げちゃヤダよ」
目だけ動かした先で柊くんは静かに、だけどやっぱり妖艶さたっぷりに、微笑んでいた。
「じゃ! また午後! バスケ部行ってきまーすっ」
行ってらっしゃーいとクラスメイトが見送る中、私はひとり机に突っ伏してしまう。
逃げちゃヤダってなんだ! 何から!? 何からよ! 予想できることが多すぎて訳わかんなくなってきた!! ていうか抱きしめたいって私のほうこそですよ!!!
机の下でドタバタと足踏みする私はかなり奇怪だろうけど、膨れ上がった想いを隠し続けるほうが困難で。
「思いもよらないスタートダッシュ決めたね」
咲の言う通り、決めてしまったらあとは走り抜けるだけ。
だってもう絶対に、止まりそうにない。