柊くんは私のことが好きらしい
教室内ではクラスメイトその13くらいで、街中で言えば通行人Dとかで、なんなら見切れるのが仕事って言われてもいいくらい。
ヒーローやヒロインみたいな主役級の人たちがいる世界じゃ完全にモブキャラ。圧倒的に圏外。ただの背景。それが、私。
でもそれは例えるならの話であって、私には私の世界がある。ただ、ちょっと前に崩壊した。しかも割とけっこうな人数を巻き込んで。
理由は告白されたから。
モブキャラ位置の私が告白されたって、内輪以外で話題になるはずがないのに。そうもいかなかったのは私の彼氏に名乗りを上げてくれたのが、主役級男子だったから。
『高遠陽鞠(たかとお ひまり)って誰!?』
わずか半日で1年女子に名前が知れ渡り、数日かけて男子にも顔を覚えられた。
『なんで、あの子?』
わかる。ものすごく共感する。
特別かわいいわけじゃない。表彰されるような特技もない。自分でも恐ろしいほど取り立てる部分がない。
そんな私を、どうして。
『好き、なんだけど』
1週間前のことなのに、思い出しては胸がぎゅっとしめつけられる。あの熱っぽい表情と声を思い浮かべるたび、私の顔は火照り始めて、
「どうしよう……」
ずっと、答えを探してる。