柊くんは私のことが好きらしい

「あ、お、おまたせっ」

「へ?」

間違ったー!!


小走りで目の前にやってきた柊くんは不思議そうな顔をしてから、くしゃりと笑った。


「俺のセリフとるなよっ」


うわあ、もう、なんだこの人……!


くつくつと笑う柊くんの私服は、やっぱりかっこいい。カーキ色のMA-1に、白いオーバーサイズのTシャツ。黒のスキニーパンツにバブーシュ。ふっくんが撮った写真で何度か私服姿を見たことはあったけど、生で全身見ると一層かっこいい。


これがメグ系ってやつか! たしかに男子高校生にしては大人っぽいかもしれない。たぶん、ていうか絶対、秋を先取りしてるよね。私まだ夏っぽいよごめんなさい!!


「あ。やっぱ今日、髪型も違う。すげー」


申し訳なさから顔を背けたら、気付かれた。


いつもは編み込みをしたり、ねじったりしてサイドで結んでいるだけなんだけど、今日はさらにエアリー感たっぷりなお団子にしてみた。シニヨンって言うらしい。


「そういうのもいいね。服と合っててかわいい」


とん、と自分の目元を指した柊くんをレンズ越しでも直視できず、


「あ、ありがとう……」


柊くんもかっこいいよ、とは、とてもじゃないけど言えなかった。
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