柊くんは私のことが好きらしい


「柊くんもなにか書いてくれればいいのに……」

「書いたよ。日付と場所」


そういうんじゃなくてさー……。いいけど、いいんだけど。印刷が終わるのを待ってる私の心拍数よ。


9月中旬にしては涼しい土曜日の14時過ぎ。ターミナル駅で落ち合ったあと、柊くんの希望でゲームセンターに来た。


『プリクラ撮りたい!』

って言われたときは、女子か!って思ったけど、今日はそういうプランだから断ることもできないまま、せまい箱の中で必死に笑った。訂正。必死にかわいく映ろうとした。


今はもう、現代の技術を信じるしかない。


「ていうか、ひまりが全部書けばいいのに。女子ってそういうの得意だろ?」

「ひとりで全部は無理だよっ。咲と撮っても分けるんだから」


それにいくら撮り慣れていても、柊くんと撮るのは緊張するよ。なんて書こう、って。引かれないかな、って。すごく迷いながら書いたんだから。


私も無難に日付とか、ゲーセン来たとか、書いたけど……すでにハートのスタンプ押したことを後悔してるし。いや、それは柊くんがわざとかっこつけて、私が背後で『きゃあイケメン』みたいな顔したネタ撮りだからマシだけども。


キラキラスタンプの数だけ浮かれてる証拠に見られたらどうしよう。恥ずか死ぬ。
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