柊くんは私のことが好きらしい

「なんか欲しいのある? あんまり得意じゃないけど」


半歩後ろで、UFOキャッチャーの景品を眺める柊くんの横顔を盗み見る。


ここに来るまでだけで、女の子たちが何人も振り返った。そんな人が、私なんかを自慢する、とか……かわいい、とか言うなんて、夢じゃないかな。


「じゃあ……ぬいぐるみ。キーホルダーみたいなやつ」

「あー。小さいやつなら獲れるかも。あるかな。ちょっと見て回ろ」

「うん……」

「欲しいの獲れなかったら、そこはごめん」


柊くんに獲ってもらったものなら、なんだって嬉しいし、胸に抱きしめたくなるだろうけど。


本当は柊くんをいちばん、ぎゅうって抱きしめてみたいなって、思った。



「ないなー」


ゲームセンターを出て商店街を直進していると、柊くんの眉が下がる。脇道を通りかかるたび覗き込んでいるのに見つからないから、残念なんだろう。


米粉クレープの移動販売車。今度は私の希望で探していた。


「見ればわかりそうだけどな。有名?」

「おいしいって評判みたい。この前ふっくんが、見つけたら絶対食べるべきって……教えてくれたというか、熱弁された」

「ああ……あいつ、そういうの詳しいもんな」


やたらお店とかデートスポットを知ってるもんね。過去に彼女がいたこともないのに。妄想で調べて培った知識だと思うと確かにちょっと不憫になる。
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