柊くんは私のことが好きらしい
小鷹くんは面倒くさがりゆえの時短マニアで、自分でやったほうが早いと思うことは率先してやってしまうし、できてしまう力量を持った、なんとも疲れそうな性格をした男の子なのだ。
ふと目に入ったときは大抵、眉間にしわを寄せている。
それでも何人か告白する女の子はいて、きっぱりバッサリ断られていた。本人曰く、恋愛はひたすらに面倒くさいらしい。
柊くんに告白される少し前から話すようになったから、まだそんなに知らないんだけど。
「彼女ができるとしたら、ふっくんのほうが先だろうなあ」
「――あっ! ひまりアレ!」
突然、商店街の脇道を指差した柊くん。
煙草の自販機と、木製の丸テーブルにベンチのセットがふたつ。その奥に集まる人混みに目を凝らすと、白のボディカラーにピンクとブルーの波模様、その上に文字がペイントされた車が停まっていた。
「やったぁ! アレだよ!」
「行くべっ。にしてもめっちゃ並んでるなー」
8割女子だし、と笑う柊くんと米粉クレープの移動販売車に向かう。車の周りには順番待ちの客が集まっていて、その列に加わると、店員のひとりがメニュー付きのチラシを渡してくれた。
「わー、かわいい。迷う~」
「俺チョコバナナかな。どれで悩んでるの」
「私もチョコバナナ好きっ。で、いっつもブルーベリーとどっちにしようか悩む」
「じゃあ俺の食べればいいよ」