柊くんは私のことが好きらしい
「えっ」
「あれっ、ひまりそういうのダメだった……っけ?」
「や、平気……なので、お言葉に甘えよう、かな」
「うん」
「……うん」
へへ、と妙な雰囲気に笑い合って、わたしは生クリームとブルーベリーソースに決めたのに再びチラシへ視線を落とす。本当は顔をうずめてしまいたいくらいだった。
何を過剰に反応してるんだ私は!!
ひと口あげるなんて日常的にやってるのに! 一応男子のふっくんにだってあげたことあるのに!
もんもんしながら、チラシの文字を無意味になぞる。
こんなこと、柊くんは意識すらしないよ。さらりと自分のを食べればいいって言えちゃうくらいだもの。
なんだか頭の出来から違うっていうか、経験値の差が顕著になってるだけじゃないかと思えてきた。
柊くんだもん、デート経験くらいあるだろうし、彼女がいた時期もあるに決まってる。今日は緊張してる様子もない。
私だけ、だよねぇ……。
またモヤモヤした気持ちが生まれてしまう前に、チラシを折りたたむ。
大丈夫。こんな私でも一応、あの姉その2と同じ血が流れているんだから!
「早く食べたいねっ」
見上げれば、ふわりと笑う柊くん。
すぐ余裕のなくなってしまう私だけど、今日は、『楽しかった』と言われて終わりたいな。