柊くんは私のことが好きらしい
「バス待ってるあいだにメールするよ」
改札口を通りながら言うと、柊くんはまだ承諾しかねる表情をしている。
「……家に着いてからも」
「あはは。うん、わかった」
心配性だなあ。これは彼女になったら大変そうだ……って、他意はないです。自然と思っただけです。
誰に向けてでもない言い訳を並べながら、電車を待つ。その間に柊くんの携帯がメッセージを受信し、手早く返信していたようだった。
ぴこん、ぴこん、とまた受信音が鳴る。
……笑った。
声を漏らさず、どちらかといえば口元が緩んだだけで、嬉しそうに見えた。
女の子、かな。ふっくんとか小鷹くんの可能性だってあるのに、真っ先に女の子じゃないかって思ってしまう。
これは、宿命と言われるだけあるんだろうな……。
柊くんの連絡先を知っている女の子なんて山ほどいる。用があってもなくても連絡する子だってたくさんいるだろう。それは恋のせいなのか、私が知る由もないけれど。
「……ひまり?」
ぱっと顔を上げる。いつのまにか柊くんは携帯をしまっていた。