柊くんは私のことが好きらしい
「あ、ごめんっ。どうかした?」
「や、なんか……疲れた?」
「え!? 疲れてないよ全然! 元気ですっ」
「そう? ならいいけど……電車は座りたいよなー」
「だねえ」と答えながら、自分の表情が気になった。
疲れてるように見えたのなら、ものすごくやり直したい。疲れることなんてひとつもなかったんだから。
楽しかった。最初は緊張でどうにかなりそうだったけど、ちゃんと楽しめた。
……本当は、少し不安だったんだ。
また、置いてけぼりにならないかって。ついていけなくて、そんな私はつまらないって思われないかって。
だけど、ちっともそんなことなかった。歩調を合わせてくれたように、今日の柊くんとは同じ目線で色んなものを見れた気がした。
「あの……今日は、ありがとう」
突然の感謝に柊くんはびっくりしたようで、「どうしたの急に」と笑ってくれた。電車に乗ったら、言わずに終わってしまいそうだと思ったから。
「俺のほうこそ、ありがとうだよー……って、なんだこれ。照れるな」
本当に気恥ずかしそうに首筋を掻く柊くんが、それでも笑みを浮かべてくれる。だから私も、素直に感じたことを言えた。
「あのね、ふたりで出掛けるって決まってから今日まで、すごい緊張してて……。自分が行きたいところに交互で行こうって言われたときも、どこにすればいいかわかんなくて、楽しんでもらえるかなって、不安だったりしたのね」
「……うん」