柊くんは私のことが好きらしい
ぴくりと震えた次の瞬間、きゅっと握られた、指先。
たった3本。全神経がそこへ集中してるみたいに、うまく頭が回らない。
何も言えなくて、柊くんさえ何も言わなくて。前を通りすぎた人と目が合ったとき、なぜか一気に顔が熱くなった。
うわあ……! 見ら、見られた! いや私の顔だけど! けっしてこの、この状況を見られたわけでは……!
訳もわからずうろたえていれば、締め付ける力が弱まって、またすぐ握り直された。今度はぎゅっと、手のひら全部。
ギャーッ!と心の中で叫ぶ。
なんで、なんで何も言ってくれないんでしょうか……!! 前回は繋いでもいいか聞いてくれたのに、どういう心境の変化ですか!?
キャパオーバーしそうな頭で必死に絞り出した解決策は、柊くんを見る、だった。
赤面でもしていてくれれば、まだ落ち着きを取り戻せたかもしれないのに。柊くんはあさっての方を向いて、私を見ようとしていなかった。
何それずるい!! ものすごく声かけづらいじゃんか!
声をかけることも動くこともできず、受け入れることしかできない。なんて、嫌なら振りほどけばいいだけなのに。できっこないってわかってる。
無理だよだって、こんなにどきどきしてる。私も握り返すべきか、なんてことまで考えてる。