柊くんは私のことが好きらしい
最初はひんやりしていた柊くんの手が、私と同じくらいあたたかくなってきて、気持ちまで流れ込んでしまわないかと変なことを思った。
もし、本当に流れ込んでしまうとしたら、私は手を繋げないな……。
心臓の音が静かになってきた頃、電車がやってきた。思っていた通り、手は繋いだまま電車に乗り込む。
「……本当に送らなくていい?」
やっと口が開かれたのは、柊くんが降りる駅のひとつ前だった。
なんだか体中がふわふわしていて、今日デートしたのも、手を繋いでいるのも夢なんじゃないかと思う。
「送らなくていいよ。時間もお金も倍かかるし」
「……そんなの気にしなくていいのに」
「ダメです」
どうして、と言いたげな柊くんへ微笑みを向ける。手を握り返すことは、できないけど。
「今日の分は、とっといてほしい。学校のあと、寄り道できるように」
柊くんはぱちくりと瞬きをしたあと、「あー……」と気が抜けたようにドアへ頭を寄りかからせた。
「なんか元気出た」
「……元気なかったの?」
「ひまりが好きってこと」
その不意打ちに、夢見心地だった私は真っ赤になることなく、ただただ、嬉しい、と感じた。