猪の目の酸化還元反応
「結、婚…?!」


「はい…、亡くなりましたが。」



認修の大学の同期で、十数年前たまたま古書店で知り合って結婚した。


しかし、小説家志望で渾身の出来を賞に応募した翌日、青壮年突然死症候群で帰らぬ人となってしまう。


救急隊曰く理由は過労だった。



「しばらくは印刷所にいたのですが、職人が高齢ということもあって閉めたんです。」



楽しくはしゃげる友達も、


言い合い出来る関係の元婚約者も、


どんな時も頼れる義両親も、


心配してくれる知り合いもいるのに、


何で私は孤独を感じるの?

何で私は一人なの?

何で私は一人ぼっちなの?

ねぇ、どうして?



意味記憶もエピソード記憶も手続き記憶もあるのに、それともあるからなのか?



本を見つめながら嘆息をもらす雉歳を見ていられず、里帰りした認修は自社に誘ったのだが。



イケメンともてはやされ女が数多く寄ってきて困っている、

パーティー等にはマスコミが大勢押し寄せて大変だ、

などと華々しく話したせいか、


表舞台は合わないと断られた。


二人の仲を認めざるを得なかった認修が、ビックになると努力した結果ではあるのだが。
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