風の子坂を駆けぬけて
プロローグ
通学路の丁度真ん中辺り。
決して優しくない急勾配の坂。
でこぼこしていてちょっと歩き辛いし、正直キツイ。
行きは下りでも、帰りは上りだから。
距離は無いとはいえ、小学生にとってあまりにも過酷な坂だ。
他に車通りの少ない道がないせいもあって、やむなく通学路になっている。
だけど、そんなこの坂は風の通り道でもあった。
春にはほのかに暖かい、優しくも強い風が通り、
夏には生ぬるく、蒸した南風が通り、
秋には涼しく、どこか物悲しい乾いた風が通り、
冬には枯葉を躍らせる、澄んだ冷たい北風が通る。
楽しくても、悲しくても、寂しくても、つまらなくても、怒っていても……、
いつでも風と一緒に坂を歩いていた。
『風の子坂』と呼ばれた坂道を…………。
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