風の子坂を駆けぬけて


「何って、おまえそんなことも知らないのかー?」


何となく意味を理解している知優は一瞬ドキッとした。

一方、知らない健はしつこく漣に聞く。


「なにーそれ、かぞくなのー?」


「うーんそうだなぁ、家族になる予定、かな。そうそう、未来のダンナさんって感じだな」


腕を組み、漣はわざとらしく、いかにもな大人の口ぶりで言ってのける。


そして健はその意味を知り、口がポカンとした。



「ダンナ…さん?けっこん、するの?」


「そうそう!ちゆーちゃんの未来のダンナさん」


事の成り行きを見守っていた知優は、その発言についに顔を真っ赤にしてしまう。


すると、健はガバッと知優の目の前に立ちふさがり、両手を広げた。



「ダメ!ぜったいダメ!にいちゃんでもダメだもん」


「なんで」


「だって……、そんなの、ずるい。ぼくだって……なりたい…」


むくれながらぼそぼそ言う健に、ニヤニヤする漣。
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