風の子坂を駆けぬけて
「お~なんだなんだ?聞こえないぞー?」
からかわれた健は途端に泣きそうになる。
そんな顔を見て慌てた知優が、健の服の袖を引っ張ろうと手を伸ばそうとした時……。
「わっ!」
同時に彼等の頭をわしゃわしゃする漣。
「よしよーし!かわいいやつらだなぁ。ま、仲良くやれよー」
そう言って漣が部屋を去ると、何だかいつもと違う、胸がムズムズする空気になった。
でも、すぐに知優の母親が迎えに来たことで、そんなに気になることもなかった。
その後もいつもと変わらず仲良くしてくる健だけど、知優は前よりも嬉しい気持ちが強くなって、話かけてこない時は明らかに寂しく思うようになっていた。
(これが胡桃の言う、“恋”なのかも……。)
もうすぐ冬が始まりそうな、秋の乾いた風の頃。
知優は思い切って、自分の気持ちを胡桃に初めて打ち明ける決心をした。