風の子坂を駆けぬけて
「ええー!そうかな!だったらいいなぁー」
さらにご機嫌になる胡桃は木の実を手の平に乗せ、両手ですり合わせる。
「もしかしたら、運命の赤い糸かもしれないね」
「あ!それ知ってる!運命の人と赤い糸で繋がってるんだよね、えっと小指だっけ」
持っていた木の実を丁寧に端っこに寄せると、胡桃は自分の左手を広げ小指をじっと見る。
つられて知優も同じように小指を見つめた。
どっかで聞いた赤い糸の話。
本当かどうかよく分からない。
それでも、漫画やアニメの世界に出てくる魔法のように、実は本当にあるんじゃないかと、不思議なドキドキとワクワクが二人に流れる。
「……ちゆー、胡桃本当にあるかも。赤い糸」
独り言のようにそう呟く胡桃。
きょとんとする知優に、ほらっと左手を目の前に出す。
「ここ!赤い線がついてるでしょ、これだよー!」
胡桃が示すそれは、指の皺に沿って染まる赤い線。
確かに“赤い線”だ。