風の子坂を駆けぬけて
むしろ、彼女でなければ打ち明けなかっただろう。
それくらい信用していたし、大好きだったから。
恋をしている彼女はいつも楽しそうで、かわいくて、知優はそんな姿を見続けてきて、自分もそうなりたいと思ってもいたのだ。
初恋宣言と一緒に、忘れてはいけない事があった。
知優は大事な約束を一つお願いした。
それは『好きな人の事を誰にも言わない事、2人だけの秘密』を。
彼女は大きく頷き承諾した。
日暮れが早くなり始めたのか、晴れた青空の下の方で、にわかに茜色が見え隠れする。
胡桃と別れ、迎えに来た母親をと共に公園を後にした。
一人で抱えた秘密が胡桃に話したことで、ほっとしたような。
でも秘密を共有していることのほうがもっとドキドキする、そんな感情が混じって少しひんやりする乾いた風が、彼女の火照る頬をそっと撫でていった。