風の子坂を駆けぬけて
式を終え、それぞれ親も混じり、教室は賑やかに記念撮影が行われていた。
そんな中で元気いっぱいの明るい明日香の声が耳に届く。
「これすごーい!おもしろいの見っけー」
「なになにー?」
何やら明日香の周りに人が集まっている。
荷物を預けに母のとこにいた知優は、何なのか分からず不思議に思う。
すかさず明日香の方へ向かおうとした時だった。
「見て見てー!たこ焼きー!おいしそう!」
そう言いながら、明日香は健のほっぺたを指で丸く掴み、もう片方の手でほっぺたをつつく。
「きゃはははは!ほんとうだー」
「健くんてたこ焼き作れるんだー」
「わたしもー作るー」
(あれ……何でだろう……、面白く、思えない)
目の前の光景に足は固まった。
周りの子はいっぱい笑ってるのに、知優だけどうしても笑えそうになかった。
それどころか、ズキンッと一瞬にして胸に痛みが走った。
そんなことは初めてのことだった。