風の子坂を駆けぬけて
外では賑やかな声が飛び交っている。
みんなの中に入りたくない訳ではない。
ただ、どうしたらいいのか、分からなかったのだ。
極度の人見知りで、仲が一番良い『胡桃』とは、生憎別のクラスだったこともあり、一人きりになってしまうことは、何も珍しくもなかった。
それでも、退屈、寂しい、心細い、そんな気持ちは慣れることはなく……。
いつものごとく突っ立ったまま、もじもじしていると、後ろの方の長机でお絵かきしている女の子に気が付いた。
夢中になっているのか、知優に気づくことなく画用紙にクレヨンを走らせている。
あまり登園していないようで、知優もその子のことはほとんど知らない。
沙耶(さや)という名前で、背の順で前から2番目の知優より、ずっと後ろの順番であることくらい。
そーっと近寄ってみると、画用紙に黄色で大きな動物らしきものを書いていた。