風の子坂を駆けぬけて
担任の先生も、授業を終えると「校庭に行ってきなさいねー」なんて口癖のように毎回言うものだから、それが彼女にとってはドキリと嫌な気分がした。
例えクラス全員に呼びかけている、何気ない一言だとしても。


しんと静まった教室に廊下。

どうやらほとんどの児童が校庭へ出て行ったようだ。


髪を三つ編みにした女の子の絵を描いていた時、廊下から足音が聞こえた。
ゆっくり近づいてくる。

誰かは予想できた。


『先生』だ。



じっと息を潜め、鉛筆を持つ手も止まる。



すると、足音が隣の教室で消えた。
先生は隣のクラスの先生かもしれない。


そう思った知優は急いでノートと鉛筆を引き出しにしまい、颯爽と教室を出た。

足音を立てずに。


教室に残っている、そのことで注意されたり、心配なんてされるのがとても面倒なのを、彼女は一番知っていた。


前に一度、経験したことがあり、ずんと心が重くなったのだ。
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