風の子坂を駆けぬけて
どうにかこうにかドキドキの休み時間を潰しつつ、ようやく迎えた1学期終業式。
朝顔の鉢植えや図工で使った絵の具や粘土、授業で描いた絵や作った作品など、少しずつ分けて持ち帰っていたものの、うっかり忘れていたのが粘土版だった。
ランドセルの蓋に挟んで持って帰るのが手っ取り早いが、バランスを取るのがちょっと難しい。
しばらくすると、片側からずり落ちてしまうのだ。
この日は、朝の通学班編成での一斉下校だったから、いつもの胡桃や健達とは違い、上級生ばかりだ。
緊張してしまう上に、面倒な粘土板も気になり、さらには梅雨明けの暑さでヘトヘトだ。
親や姉にならすぐにだって泣き言を言いだす程、本当は辛抱強くはない。
(疲れた。暑い。重い…。)
照りつける日差しが容赦なく、幼い彼女に降り注ぐ。
どうやって足を動かしているのか感覚がなくなるくらい、足元がふらつく。
揺れているのが自分なのか、地面の方なのか、混乱した。