風の子坂を駆けぬけて
生ぬるい風が邪魔するように体にまとわりつく。
(あ、そうだ、まだこの坂があったんだ。)
暑さと重さでさらなる難関へと誘う、あの、急勾配の坂、『風の子坂』。
いつもの何百倍もの高さを感じた。
胡桃達と話しながらでは、そんなにキツさもなかったのに、今ではいくら登っても先が見えない山登りのよう。
坂の真ん中にも届かない所で、石に躓いた拍子に、知優はその場に崩れるように倒れてしまった。
同じ班の上級生達がすぐさま駆け寄り声を掛けるが、彼女の耳には入らない。
それくらい、状態は酷かった。
立ち上がることができず、ただその場に座り込み、誰かがランドセルを下ろしくれて、ふっと背中が軽くなったことは理解できた。
どれくらい時間が経ったかどうかも彼女には分からなかったが、人だかりができて、なんだかとても大変なことになってしまったのではないかと、じわじわと涙が浮かんでいた。
そんな時、しゃがみこんでいた知優の視界に見知った顔が覗き込む。