風の子坂を駆けぬけて
「やろうやろう!!」

明日香もすっかり楽しげだ。

一人遅れを取った知優は、冊子のあるページに目を留めていた。


「ね、みんなで一緒に鼓笛隊クラブに入ろうよ!」

「いいよ、私も楽器やってみたかったし」

「だよね!ちゆーは、他に入りたいとこあった?」


沙耶もすんなり誘いに乗ると、後に続いたのは胡桃ではなく明日香の心配そうな声だった。

さっきから大人しい彼女の様子を察したようだった。


「うーん…。私も一緒に入ろうかな」

「よーし!そうと決まれば、明日の見学からだねー!楽しみっ」


知優と明日香の肩に手を乗せ、やはりここにいる誰より一番の笑顔を咲かせる胡桃。

知優はそんな彼女の笑顔に救われてもいたし、『みんなで』と誘ってくれたことには感謝もしていた。
一人、みんなと違うクラブに入るなんてことは絶対したくなかったのだ。



本音は胸の奥に隠しながら。



見学日には、早速実際に鼓笛隊で担当する楽器やバトンを体験することとなった。


胡桃はバトン。明日香はリコーダー。沙耶と知優は鍵盤ハーモニカをそれぞれ体験した。


上級生に指導されながらの、あっという間の1時間。







< 42 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop