風の子坂を駆けぬけて
そんな訳で、知優はいつしかクラブの後を4人で帰るのが苦痛になってしまっていた。


失敗したり怒られたなんてことは、水を差すようでみんなの前ではなかなか言えず、ただ「難しい」とだけぼやく程度で。


同じパートである沙耶だけは状況をもちろん知っていたけど、彼女の口から知優のことを話すことは一切なかった。
妙に気を遣われいることが、嬉しいよりも何だか悲しくもあった。





久々に鼓笛隊の全体練習をすることになった日のこと。

体育館を借りてのいつもの倍の緊張感。


朝からずっと気分が優れない知優。
ようやく訪れたクラブの時間には、心臓が爆音だった。


隣りに並ぶ玲の冷たい視線がやけに刺さる。
怖くて顔はずっと下を向いていた。




知っていた。

もうずっと前、クラブに入る前からこうなることは知ってたはず。




知優は演奏が終わるまでずっと下を向いてた。


床には零れ落ちた涙の水滴が光る。





失敗したのだ。


何度も教えてもらい、注意されて来たのに。












< 47 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop