風の子坂を駆けぬけて
鍵盤ハーモニカを左手でバンドに挟み持ち、右手で弾くのだが、どうにもこのスタイルだと余計に右手の指の感覚が掴めなくなってしまうのだ。
「辞めた方がいいよ。本当はやりたくないんでしょ」
そう言い放った玲の言葉が、知優の耳から離れなかった。
演奏序盤からもう指が震え鍵盤を叩けず、弾くことはすっかり諦めた。
悔しさや恥ずかしさが彼女を覆い尽くし、堪えていた涙はついに抑えきれなくなっていた。
演奏が終わると真っ先に駆け寄った桜子。
それに続いた沙耶。
離れた場所にいた胡桃と明日香も彼女を慰めに飛んできた。
どんな優しい言葉を掛けられても、今はちっとも嬉しくもなく、辛さが勝っていた。
反省会をしにそれぞれのパート練習場所に戻っていく中、知優はトイレに行くと言い残し、クラブの時間が終わっても戻ることはなかった。
心配した顧問の先生と手分けして探したのは、桜子と沙耶だった。
彼女がいた場所は図書室。
一番隅の席でうつ伏せに泣いていた知優に、桜子が声を掛けた。
「知優ちゃん、大丈夫?…今日はもう帰ろう。明日また、ここに来てくれる?お話したいことがあるの」
「…」
状況の掴めない言葉にゆっくり顔を上げると、にこりと微笑む桜子と目が合った。
「辞めた方がいいよ。本当はやりたくないんでしょ」
そう言い放った玲の言葉が、知優の耳から離れなかった。
演奏序盤からもう指が震え鍵盤を叩けず、弾くことはすっかり諦めた。
悔しさや恥ずかしさが彼女を覆い尽くし、堪えていた涙はついに抑えきれなくなっていた。
演奏が終わると真っ先に駆け寄った桜子。
それに続いた沙耶。
離れた場所にいた胡桃と明日香も彼女を慰めに飛んできた。
どんな優しい言葉を掛けられても、今はちっとも嬉しくもなく、辛さが勝っていた。
反省会をしにそれぞれのパート練習場所に戻っていく中、知優はトイレに行くと言い残し、クラブの時間が終わっても戻ることはなかった。
心配した顧問の先生と手分けして探したのは、桜子と沙耶だった。
彼女がいた場所は図書室。
一番隅の席でうつ伏せに泣いていた知優に、桜子が声を掛けた。
「知優ちゃん、大丈夫?…今日はもう帰ろう。明日また、ここに来てくれる?お話したいことがあるの」
「…」
状況の掴めない言葉にゆっくり顔を上げると、にこりと微笑む桜子と目が合った。