風の子坂を駆けぬけて
翌日の放課後、一人図書室に行くと、桜子はカウンターで貸出カードの整理をしていた。
彼女は図書委員だと聞いたことがあった。


「今日も終わった―。こっちで話そう!」


ランドセルをお互い机の上に置くと、桜子は持っていた本を知優の前に広げた。



楽譜だということは分かったが、いつも見ていたものとは違った。


「これね、木琴の楽譜。私から言うのも、どうなんだろうって感じなんだけど、知優ちゃんさ、木琴に担当変更してみない?」

「え?」

「違うの、あのね、知優ちゃんすごく頑張ってると思うし、諦めて欲しくないんだけど。続けるの、無理してないかなって。玲にも酷いこと言われてるでしょ?それでねっ…」


知優を心配してのことらしく、担当変更は桜子が思いついた案で、顧問の先生とも何度か相談していたそうだ。


「どうかな、強制じゃないからね。知優ちゃんの好きなパート選んでいいし、見学だけでもしてみない?」

「…うん。見学してみる」

「よかったー!先生にも伝えておくね」


これで、よかったんだ。
彼女はそう思った。

心なしか、こうなることを望んでいたようだった。
確かに最初こそ図工クラブに入りたかったが、鼓笛隊クラブを辞めるという選択肢はやはりなかったから。








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