風の子坂を駆けぬけて
知優は髪をリボンで結ぶ女の子の絵を書いた。
「わー、かわいい!うまいねー!」
沙耶の言葉に照れる知優。
相変わらず返事もできず俯いていたが、それでも沙耶は何も咎めずに、楽しそうに笑った。
知優は本当に絵が好きだった。
家でもらくがき帳を何冊と持っていて、遊ぶ時間は絵を書く時間にもなっていた。
お出かけする時にも鉛筆と小さなノートを持ち歩いている程。
好きな事を一緒に楽しめる、褒めてくれる、そんな事が彼女はとても嬉しかった。
2人きりの教室、賑やかな外の雰囲気とは対照的でも、穏やかで心地の良い時間だった。
この出来事が知優と沙耶が親しくなるきっかけだった。
その後度々、2人で絵を書くようになった。
たまに他の子も交えて書くこともあった。
いつも一人でいた知優にとってとても大きな進歩ではある。