風の子坂を駆けぬけて
久しぶり、でもずっと見慣れていた顔。


胸がドキンと明らかに高鳴る。


それは相手が健だったからだ。




持っている木琴のバチに思わず力が入る。

ここでうっかり油断できないと、演奏に集中し直す。



健と知優は今年になってからクラスが分かれてしまい、通学班も別の班に移動になったり、下校班も無くなったりと、一緒にいるどころか顔を合わす機会がすっかり減ってしまったのだ。



たったの一瞬だけだとしても、顔を見られて嬉しく感じ、また演奏している姿を見られていることが途端に恥ずかしくも感じた。




終えてみたらあっという間のパレード。

運動会では、つい健の姿を探してしまう彼女がいた。




鼓笛隊での舞台を終えたことで、ほっと肩の荷が下りたと同時に、忘れかけていた恋が再び動き始めた。

クラブ活動でいっぱいいっぱいだったこともあり、恋のことなど遠ざかっていた。


意識しないで過ごしていたことが不思議なくらい、知優は運動会後もずっと健のことが気になって仕方がなかった。



廊下を通る時にどさくさに紛れて彼のいる教室を覗いてみたり、掃除の時間にたまたま通りかかる彼を待ってみたり、下手したらストーカーのようだ。





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